日本と世界の集合住宅とマンションの計画案内

日本的集合住宅のでき方

日本のマンションをみて、その形のおかしさに気づくことはないだろうか。特に何も感じない人は、その形態が都市の住宅として刷り込まれているのだ から、ある意味幸せなのかもしれない。しかし、少しでも集合住宅の計画論を学んだり、ヨーロッパやアメリカの都市を訪れたことのある人は、この日本の集合 住宅の形態のおかしさに気づいているはずである。
日本のマンションブームの時期に、短期的に建設された集合住宅には、欧米の直輸入そのものではない「日本型」と命名可能な共通の特徴が見られる。
その形を絵に描いてみると、下図のようになる。その図が日本のマンションの形態の典型であることに異論を唱える人はいないと思う。
敷地の南側一杯にL字形に住棟が配置され、敷地の北側は駐車場であふれる。その住棟は敷地の両端に向かって、段々に高さが低くなる形だ。住棟の南側はバルコニーが連続し、反対の北側は廊下が続く。

このマンションの形態は、日本のあちこちで見られるものであるが、特に都心部から電車で10分~30分の主要駅の徒歩圏によく見られる。比較的に広い敷地がとれて、建築条件も比較的に緩いような場所となる。
それでは、なぜこのようなマンションの形が生まれてきたのか。これまでにも、これらの形が街並みを整えないことや、都市と生活のつながりとして相応しく ないことは、多くのところで指摘されてきた。ただ、様々な要素が複雑に絡みあっているために、一言で背景を表現するのは難しい。
ここからは、日本のマンションの形にまつわる特徴・背景・要因をまとめ、複雑な構造を解きほぐしてみたい。
そこで、日本の固有なマンションの形を考えるの視点として「住居観」「法制度・インフラ」「技術」「市場原理」の大きく4つの軸を設定した。これらの相互の関連を図式的にとりまとめると、今の日本におかれたマンションの形の背景を説明できそうである。
それぞれの項目について説明を加える。

●住居観
日本の集合住宅居住の歴史は西欧諸国に比べると浅い。同潤会のように結果として一部の裕福層の集合住宅は存在したが、集合住宅の形式が本格的に一般的な サラリーマンの生活の器となるのは戦後のマンションブーム以降からである。大量供給がマンションの普及を支えた。しかし、都市に集まって住むための住居観 や住文化は、ソフト的にもハード的にも十分に育てられなかった。
例えば、「都心の集合住宅でも日照が必要なのか」とか、「集まって住むことのメリットをどう活かすのか」とか。その辺りの議論が十分でなかったために、そのハードである建物の形態も都心の住居としてふさわしい方向にはならなかった。

●法制度・インフラ
法制度・インフラには、政策という枠組みと、建物の形態を制御する都市法・建築法という枠組みの2つが絡んでいる。政策の枠組みは持ち家政策を推し進める政府の考えのもとで、住宅による資産形成こそが人生の目標という価値観をもつ多くの市民を生み出した。
後者は、全国一律すべてのビルディングタイプにあてはまる法律で、地域の個性を許さないものであった。また、整った街並みをつくるという美意識もはその精神に持ち込まれなかった。例えば、都心の既成市街地で、街並みが整うようには法の体系がなっていない。

●技術
技術革新は確かに人々の暮らしを楽にした。システムキッチン、エレベータなどたくさんの技術革新による製品があるが、生活に欠かせないものをそぎ落とし ていくと、ほんとうに必要なものは実はそれほど多くはない。残りの多くは、商品価値を高めるために付加的につけらえているにすぎないものといってよい。
技術至上主義が過度に進行すると、その技術を使うためだけの製品化という、結局本末転倒ともいえる製品が生まれてしまうのだ。

●市場原理
市場原理が一番問題となっている。デベロッパがキャスティングボードをにぎっていて、マンションのほとんどは、デベロッパの意向次第でその形態のすべてが決まっているといっても過言ではない。
「土地はいくらで買ったのか」、「建物を引き渡すまでの金利は」、「住宅をどれだけ詰め込んで(といっても最大限詰め込むのだが)」、「そのためにはどん なアクロバティックな法の解釈があるのか」などを検討して、「さていくらでそれを売るのか」を決めていく時には、計画者も建築家も、もちろん市民も入れな い。
建築家がいくら優秀であっても、市場原理の前では涙を飲まざるを得ないことの方が多い。建築家にとってのクライアントとは、いつかはそこに住むことになる人たちではなく、開発行為をにぎるデベロッパなのだ。市場の原理には並大抵では勝てない。

ここでは、日本のマンションのうち「都市内分譲マンション」を対象とし、主に計画に見られる特徴の成立背景や要因についてみていくことにしたい。「住居観」「法制度・インフラ」「技術」「市場原理」の4つの軸から、14項目の日本のマンションの特徴について見る。

都市内分譲マンションの主に計画・形態に見られる現象

都市との関係 高層化 壁面後退 建物間の隙間 .
配 置 南面重視配置 北側集中駐車場
住 棟 開放片廊下 (連続)バルコニー フロンテージセーブ フロー重視
共用空間 形だけの共用空間 使われない集会室 . .
住 戸 定型3LDK . . .
設 備 設備重装備 オートロック . .
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